第二十八章(Part 2) 三柱の鳥居

橿原教授は、枯れてしまった元糺の池の中から鳥居に向かった。
この池は二つに分かれていて、鳥居のある場所は奥の池だ。
一般の人間は手前の池でしか水に触ることが出来ない。
教授の後をついていった雄仁は、さきほどから不思議な石の鳥居に魅入られていた。
鳥居と言えば、左右二本の柱の上に笠木をわたし、その下に柱を連結する貫(ぬき)を入れた形が常識だ。
ところが、ここのは石の鳥居が正三角形の三点の処に柱を置いて三本の笠石と貫を繋いだ鳥居である。
この三柱の鳥居の真ん中に入った教授は、中心にある穴を覗いていた。
「何か見えますか?」
雄仁の声が聞こえないくらい、教授は神経を集中している。
「完全に枯れているようだ」
鳥居から出て来た教授は満足した様子で雄仁に言った。
「どうして、こんな変わった鳥居なんですか?」
「この木嶋(このしま)神社は秦(はた)家の神社で、景教の信者だったと言っただろう。景教という名前は中国で作られたもので、紀元二世紀にペルシャ、インドを通って中国に伝わり、イエスをキリストすなわち救世主と認めた原始キリスト教ネストリウス派と呼ばれていた宗派だ。そして当然イエスをキリストと認めるのだから、『神』と『神の子』そして『精霊』という三位一体説を信じていた。
この三柱は、その三位を顕しているんだ」
キリスト教の知識などほとんど持ち合わせていない雄仁にはピンとこない。
「君の関心は、金閣寺と大徳寺の織田信長の坐像だろう。
 そのうちに京都という町の正体が解ってきたら納得するだろう」
朝から歩き続けで疲れた様子の雄仁を見て、「そろそろ、昼食とするか」
と言うと、表情が明るくなった。
『まだまだ子供だな!』と思う橿原教授だった。