第三十四章  大谷大学転入

源春雄が龍谷大学の二年生で、平岡雄仁と同じ歳だというのも何か深い因縁に思える橿原教授だったが、まだ二人に話しをするのは早計だと思った。
「源君の家は京都かい?」
橿原教授が尋ねると、春雄は素直に答えた。
「いいえ。僕の実家は鎌倉です」
またまた仰天する教授だった。
「それじゃ、今は下宿生活だね?」
またまた驚きの返事が帰って来るのを期待して訊く。
「鞍馬の貴船にいます」
「それは、やはり君の祖先の源義経を偲んでかね?」
「はい、そうです」
雄仁は、春雄の返事に疑問を持ったが、それをすぐに教授が解いてくれた。
「鎌倉殿は源頼朝だろう?どうして義経なんだ?」
春雄は、頭をかしげて、困っていた。
『詳しいことは、知らないんだろうな・・・』
教授は、それ以上訊かなかった。
「それじゃ、失礼します」
丁寧に挨拶をして春雄は百万遍の駅に向かった。
ゆっくりと都屋旅館に歩いて行く教授が、雄仁の様子を見ると正常に戻っていた。
二人で大浴場に浸かっていると、急に雄仁が口を開いた。
「先生!僕は大谷大学に入ります。いいでしょう?」
予想はしていたが、教授は即答を避けた。
龍谷大学は、三百年以上の歴史を持つ本願寺の学寮から、大正時代に大学になった。
一方、大谷大学も学寮から真宗大学を経て、昭和24年に大谷大学となった東本願寺派の大学だ。
同じ真宗でも西本願寺と東本願寺は因縁深い関係だ。
それを知ってか知らぬか、雄仁は源春雄が龍谷大学の学生だと聞いて、大谷大学に入ると言った。
何かに振り回されていると思った教授は、『今は、そっと放っておいて様子を見るしかない!』と思った。