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第四章(Part 2) 美意識という狂気 雄仁は洋介に対して最初から反抗的であった。 そのことを医者の麻生に指摘されるまで、洋介はまったく気づかなかった。 「あなたは、彼から嫉妬されていますよ。何故か分かりますか?」 麻生に質問された洋介は驚いた。 平野洋介は三流大学を卒業して、体格が日本人ばなれしているのを活かして武道の道に入り、それが理由で警察官になっただけの人間であったし、本人もごく普通の人間だと思っていた。 それが犯罪者とは云え、東京大学に入学した雄仁から嫉妬されるなんて思いもよらない。 「先生の言われることは、どうも頭脳の程度が低いわたしには理解に苦しむことが多いですな」 精一杯の皮肉を言ったつもりの洋介だったが、麻生は冷静だった。 「嫉妬の原因はあなたのその立派な体ですよ。わたしだって、あなたと最初にお会いした時、それに近いものを感じました。人間の価値観なんて、それほど多様でいい加減なものです」 今までそんなことを言われたことがなかっただけに、洋介は驚きながらも内心では悦びを感じていた。 警察官仲間では、洋介ぐらいの体格の人間は掃いて捨てるほどいる。 当時、子供たちが憧れる職業の中で警察官が多かったのも、ここに理由があることを麻生に指摘されて初めて洋介は納得した。 「さすが心理学の先生だけに、我々のような凡人では考えつかないようなことを発見されるんですな!」 正直に感心する洋介だ。 「その“・・・・ですな”という喋り方はお止めになった方がいいですよ。警察官の方々はみなさん、そういう喋り方をされます。これは相手に対する一種の恫喝と同じです」 「すみません。言われてみれば、たしかにその通りです」 洋介は麻生には素直になれる自分を不思議に思った。 「美意識に目覚めた人間というのは、普通の世界で生きていくのが極めて困難になります。彼がそうだったのでしょう」 『もうこの人の話を聞くしかない』 と思う洋介だった。 |