第四十七章  雲西和尚の前世

前世があるとして、それが女性であれば、今世もやはり女性として生まれるのであろうか。
世の宗教で、前世と今世の性が変わったという話しを余り聞いたことがない。
まず同性というのが決まりなのだろうか。
しかし、性とは基本的には肉体上の区分けである。
もちろん精神的にも男女の基本的区分けはあるようだが、それは国ごとの文化や風土にも影響されて微妙に違う。
生物学的見地からすれば、雄と雌の違いは遺伝子によってはっきりと決められ、統計学的には、肉体上の性と性行動する習性が一致するものは七割であるらしい。
すなわち、七割は正常な異性間の性行動をするが、残りの三割は同性愛、両性愛の性行動をする。
これは細胞の遺伝子の中にあるDNAが突然変異するからであり、すべての生物に当てはまるという。
知識としては、自分の性を認識していても、体の細胞が異常な性意識を惹起するのである。
金閣寺の雲西和尚は、雲円融には道義的に接する一方で、道有には感情的になることが多々あった。
円融は自分の前世に気づき始めていたから、雲西和尚の言動をよく理解していた節がある。
一方、源道有は、自分の前世に対する意識はまったく無く、そこへ感情的に接してくる雲西和尚に対して複雑な気持ちになっていた。
「雲円融さんは、和尚のことをどう思っているんですか?」
突然質問された円融は、道有が何を訊きたいのか解らなかった。
「雲西和尚は、僕と雲円融さんとでは、態度が全然違うと思いませんか?僕に対しては、異性の感情で接しておられると感じることが多いのですが、そう感じる僕の方がおかしいのでしょうか?」
道有に、そう言われると、確かに思い当たる節がある。
「自分に対しては、初対面の時から同情心が感じられ、不思議に思ったことがある。だが道有に対しては師弟関係とは思われない言動が多い。前世で何らかの因縁があったのではないだろうか」
内心、そう思った円融だったが、道有には黙っていた。
「そうかな?僕はそんなに感じないけど」
お茶を濁した円融は、その日から雲西和尚を観察してみることにした。