第七章(Part 2) 母親との近親相姦

平岡雄仁は島根県の木次(きすき)町に住む鍛冶屋の職人平岡陣内とハナ夫婦の一人っ子として育てられた。
宍道湖に流れ出る斐川(ひかわ)には昔から有名な鉄の産地が点在し、木次はその中でも最も鉄が多く採れ、踏鞴(たたら)を使って鉄を溶かす鍛冶屋が多いので有名な町だった。
父親の陣内は根っからの刀職人で、時代が時代なら一流の刀鍛冶として名を馳せたであろう程の名人であった。
それだけに気質も異常なところがあって、まわりからは変人扱いされていた。
雄仁が小学四年生の時、陣内が近所の酔っ払いを斬り殺す事件が起きた。陣内はその酔っ払いに変人ぶりを罵られ、カッときて出来上がったばかりの刀で斬り殺したのだ。
懲役20年の刑が決まり、陣内は石見の刑務所に入れられた。
母親のハナは近くの温泉旅館の仲居として働き、雄仁を育てた。
雄仁が米子中学に入学した時、中学創設以来の秀才が入学したと学校も雄仁の将来に期待した。
普段はもの静かな少年で、母親想いの親孝行な子供だったが、父親の陣内がつくった刀を手にすると人が変わったように凶暴になる性癖を持っていた。
その刀は陣内が殺人を犯した時の刀で、陣内の話では、京都御池室町下がるに住む山崎敏行という着物商人から注文を受けたらしい。
ところが殺人事件に使われた刀だと言うことで、注文主が引き取りを拒否したため、陣内が刑務所に入ってからも家に置いてあったのだ。
雄仁が小学生の時の事件だから殆ど記憶になかったが、その刀を手にすると精神が高揚してくることに気づいたのは米子中学に入学してからのことだった。
日本はその頃国際連盟を脱退して、まさに戦争に突入せんとする時代だったから、銃剣の注文が殺到して木次の鍛冶屋も忙殺されていた。
大恐慌もやっと戦争景気で立ち直る気配をみせ始めていた頃で、ハナも旅館の仲居として忙しい日々を送っていた。
ある日、大阪からやって来た軍人のグループがハナの旅館に泊まって、どんちゃん騒ぎをして、酔っ払った勢いで仲居のハナを手篭めにする事件が起きた。
慰めものにされ、暗い広間で呆然と仰向けになって泣いているハナのところに、雄仁が飛んでやって来た。
中学生だからある程度の察しがついたが、どれほどショックな出来事か理解できなかった。
母親のハナは「もう死にたい!」と言って咽び泣くだけで、このままでは本当に自殺しかねない状態だった。
雄仁は必死に母親を抱きしめた、その時ハナの大腿部が露に見えた。
雄仁は何も感じなかったが、ハナの様子がおかしくなっていった。
ハナを抱きしめていた雄仁の背中に強い力を感じて、彼の胸はドキドキとしていた。