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第二十四章 東北一の盛り場・国分町 仙台に着いた三人は、耕一が実家に直行しようと言うのを、茂樹が説得して、大学時代にバーテンのアルバイトをしていた国分町にまず行くことを強調した。 「とにかく誰にも連絡せずに、国分町付近のホテルに泊まろう。ちょっと電話をしてくるから待っていてくれ」 茂樹は、大学の時にバーテンの仕事をしていた国分町の盛り場にあるラウンジ・ロンドンに電話をした。 「まあ、和田さん?今どこにいるの?」 ママの辰子が電話に出たので、「今、仙台に着いたんです。どこか国分町の近くでホテルを三部屋とれないですかね。男二人、女一人ですが」 「何か事情がありそうね。いいわ、ホテルユニバースだったらオーナーを良く知っているから、今から電話をしておくから、貴方の名前で十分後にチェックインしてちょうだい。その代わりに、必ずここに寄るのよ。約束よ」 「わかりました。どの辺りにそのホテルユニバースというのはあるんですか?」 「市役所から勾当台公園を過ぎて,定禅寺通りを越すと三越があるでしょう。 そこを更に広瀬通りに向かって歩いて行くと、中央警察署が見えてくるから、そこからホテルのネオンが見えるわ」 「ありがとうございます。チェックインしたら必ず寄ります」 電話を切った茂樹は、耕一と美沙子に事情を説明しながらホテルを取ったことを話した。 ホテルに泊まることになったと聞いた美沙子は少し不安になったが、それがただの取り越し苦労であることも充分承知していた。 ホテルユニバースはなかなか立派なビジネスホテルで、真向かいに中央警察署がどっしりと構えているだけで、美沙子の不安は消えてしまっていた。 「三十分後にロビーで会いましょう。少し部屋で休憩してください」 美沙子に微笑ながら言った茂樹の表情で、美佐子の緊張はやっとほぐれた。 八時半にロビーに集まった耕一と美沙子に、茂樹はロンドンというクラブに行くことを告げた。 「ロンドンと言えば、お前がアルバイトしていたところじゃないか。そんな所に行って旧交を暖めている暇はないぜ」 耕一は、露骨に嫌な顔をして言ったが、急に思い出したように言った。 「解ったよ。あそこのママは、確か辰子さんとか言ったな。青葉会の会長のこれだったよな」 小指を立てて言う、耕一の意味を理解できない程の子娘ではなかった美沙子だが、下を向いて黙っていた。 「杉本!お前が得た情報も青葉会のチンピラからだろう?」 耕一は頷いて言った。 「解った!ロンドンに行こう」 中央警察とちょうど反対側に東北公済病院があって、その横を通って広瀬通りに三人は出た。 三人が広瀬通りを渡った処で、100メートル程先に二人の男女が旅館らしきところから出て来るのを見た美沙子は、「美奈ちゃんと杉本さんだわ!」と叫んだ。 茂樹は二人のことは会ったこともないのでわからなかったが、耕一が耕作の姿らしきものを見て、「確かに、あれは耕作だ!」と叫んで、走って行った。 後から二人がやっと追いつくと、そこには岩松旅館という看板のかけた古い旅館があった。 「二人を見失ったが、多分ここに泊まっているに違いない。中に入って確かめてくるよ」 旅館の玄関に入ろうとした耕一を、茂樹は止めた。 「待てよ、耕一。せっかく偶然に見つけることができたのに、何も相手に悟られる手はないよ。聞きに行けばこちらが警察でない限り、二人に変な奴がやって来たと伝えるに決まっている。場所がわかっただけで上出来だ。あとは少し泳がせておいた方がいい」 茂樹の驚くような頭の切れの良さに、美沙子は不安と頼もしさの両方を感じた。 ロンドンは岩松旅館から歩いて五分ぐらいのところにあった。 「いらっしゃい。まあ和田さん、約束通り来てくれたのね」 抱きつかんばかりに茂樹を歓迎する辰子というママは、東京でもちょっと見かけない程の美人だった。 その時、初めて美沙子の心の中に嫉妬心が湧いたのを本人は気づいていた。 |