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第三章 貧すれば鈍する 美奈子の会社はソフト開発を事業にしているが、IT不況の煽りを喰って売上げがほとんどなく、毎月の支払いも、従業員の給料も、払えない状態に陥っていた。会社を興してから二年は快調だった、その時に蓄積をしておくべきだったのに、まだ独身の若い男では自制心がない故に放漫経営をしていたお釣がやって来たのだ。 とうとう、サラ金に手を出して、借金は雪だるまのように膨張していった。 背に腹は代えられないので、美奈子の不始末を理由に相手の男から金をゆすり取ろうとした。 盛りのついたメス犬のような美奈子も悪いが、美人局のようなことをする男も男だ。 美沙子は、突っぱねる態度をしたものの、大学時代の友人なので一緒に食事をしながら、話しを聞いてやったのだが、余りにも男らしくないやり口に、彼女も怒りがこみあげてきて、美奈子に言った。 「杉本君、いくら苦しいからと言って、美奈ちゃんの友達をゆするなんてひどいわね」 美奈子は黙って聞いていたが、喉が乾くのかしきりに水を飲んでいた。 「美奈ちゃん、どうかしたの?どこか具合でも悪いの?」美沙子が心配そうに聞いた。 「ただ喉が渇くだけで、別にどこもおかしくはないわよ」 「そう、それならいいんだけど」 美沙子は直感的に美奈子の体の異変に気がついていた。 急に立ちあがった美奈子が、「ちょっと、お手洗いに行ってくる」と言って走るようにトイレに行った。 十分経っても帰って来ない美奈子を心配して、美佐子はトイレに入って行った。 「美奈ちゃん!どこに入ってるの?大丈夫?」 大きな声で、美沙子が叫ぶと、奥のトイレの中から、呻き声が聞こえた。 「美奈ちゃん!ドアを開けて!」 必死にドアを開けようとする音がして、ドアがすっと開くと、美奈子が美沙子の足下に倒れた。 美沙子は救急車を呼び、付き添いとして同乗した。 美沙子が治療室の前のベンチに座って待っていたら、救急の先生がやって来て、「あなたは、患者の付き添いの方ですか」と聞いてきた。 「はい、そうですが。わたしの友人なんです」 美沙子が友人だと聞いて、安心したのか、医者は事務的にしゃべりだした。 「患者の方が、妊娠されていることをご存知でしたか?」 美沙子は頭が混乱して思わず呆然としていた。 「いいえ知りませんでした。それで流産したんでしょうか?」 明るい声で医者は、「いえ、処置が速かったものですから、流産せずに済みました」 と言ったのを聞いて美沙子は、ますます呆然とした。 処置室に通された美沙子が、治療ベッドの上で仰向けになっている美奈子の表情を見て、「ショックを受けているんだわ」と思った。 「流産しなくて良かったわね」 美沙子の言葉で、「わああ!」と泣き出した彼女に、「誰の赤ちゃんか解っているの?」と聞いても、首を横に振って、ただ泣きじゃくるのだった。 |