第三十一章  決着

茂樹と耕一の二人だけで、取り立てにやってきた連中の事務所に乗り込むことになった。
足がぶらぶらになるぐらい複雑骨折された男は、耕太郎と耕作に病院へ運ぶように耕一は指示した。
「あんたら、せめてそれぐらいのことは出来るだろう。あんたは、この二人のお嬢さん方を、和田の家まで送ってやんなよ」
耕一は継母の雪子に向かって睨むように言い放った。
「はい、わかりました。何でもいたします」
わなわなと体全身を震わせながら、しゃべる雪子を見て耕一は、『これが、あれだけ俺をいじめ抜いた女か。女という奴は愚かな生き物だ』そう思った耕一は、美沙子と美奈子に視線を向けると、二人とも下を向いてしまった。
『結局同じ類だ!』
心の中で吐き捨てるように言った耕一の気持ちを茂樹は察した。
やはり男同士ならすぐに解ることだった。
いよいよ敵陣に乗り込むのに、取り立て屋の連中の車に乗った茂樹と耕一は、苦笑しながら、「本当に、ますます女不信になるな」と、どちらからともなく言うのだった。
「和田!お前、あの美沙子という女性のこと好きなのか?」
耕一が茂樹に聞いた。
「はっきり言って、自分でもわからない」
答える茂樹に、「お前、お袋さんのことが気になって、焦っているんじゃないのか?俺にはそう思えて仕方ない」
耕一の言葉が図星だったので茂樹は黙ってしまった。
「あの二人の女性は対称的なタイプで、典型的な女の本質を持っていると思わないか?両方共悪い女じゃないが、あの二人を見ていると、確かに女不信になるな」
耕一はシビアーに美沙子と美奈子を観察していた。
茂樹も、内心そう思っていただけに、急に心が冷めていくのを止めようとはしなかった。
彼らの横で、震えている連中を見て、「こんなダニみたいな男でも、まだどことなく可愛い気があるよな」と言う耕一に、男の優しさを感じた茂樹だった。
「そんなことを言っていたら、これからの修羅場を切り抜けられないぜ」
そういう茂樹に、「そうだ、一挙に決着して、早く東京に帰ろうぜ」
二人は、怯えている連中を横で見ながら大笑いした。