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第三十三章 茂樹の男らしさ 杉本耕一が、こういった反社会的人種に対して異常なほどの憎悪の念を持っていることを、茂樹は高校時代からいわば刎頸の交わりの深い関係でありながら初めて思い知らされた。 ましてや、大学時代に世話になった辰子と、今にも火花を散らさんばかりの雰囲気で、両者の性格を知っているだけに、殺し合いにもなりかねないと判断した茂樹は、咄嗟の判断で二人の間に入った。 「和田さん、ここは口出ししないで。わたしも体を張ってこの商売をやってきたんだから、後には引けないことぐらい解るでしょう。借りた金を返さない奴が悪いだけ」 耕一も、普段は大手総合商社に勤める理屈のわかる社会人だ。 チンピラの態度に激情して、手を出してはいけない立場も省みず、感情をそのまま出してしまったことを内心悔やんでいただけに、茂樹の行動は、まさに救いの手だった。 「借りたのは杉本耕作という俺の弟だ。決着をつけるのは奴との間だけにしてくれるなら、たとえ奴を煮て食おうが、焼いて食おうが一向に構わない。それをたとえ親子でも恋人でも、奴の借金に関係のない人たちを脅かしてでも取り返そうとするやり方が許せないんだ」 茂樹は、人間が為す不条理を、自分の身で経験しているだけに、二人の言い分は良く理解できた。 「それじゃ、辰子さん。杉本耕作と決着をつけるが、第三者には一切手を出さないと約束してくれますか?杉本。お前もそれならいいな?」 お互いに無言で頷いた二人だったが、チンピラの一人が口を挟んで言った。 「社長。そんなことを許していたら、この商売は出来ませんで。親兄弟であろうが、恋人であろうが、金のある奴から取り上げるのが、俺たち取り立て屋の勤めです」 今まで、耕一の激しい行為の影で、冷静な態度を守っていた茂樹だったが、この一言で、今度は彼が切れてしまった。 「てめえのボスが納得しているのに、子分が口出しすれば、ボスの面子が丸潰れじゃねえか!」 怒りで真っ赤な顔をした茂樹は、その男の顔面めがけて拳を一撃した。 5メートルほど飛んで部屋の壁に叩きつけられたその男は泡を噴いて失神した。 今度は、耕一と辰子が、余りの茂樹の激しさに圧倒されて唖然としていたが、急に二人は笑い出した。 「女を好きになって、骨抜きにされていたと内心心配していたんだが、それは取り越し苦労だったようで、ほっとしたよ」 「わたしも、さっき美沙子さんていう女の子を連れて店に来たときは、あの頃の正義感の強さが、どこへ飛んで消えてしまったのかしらと、杉本さんと同じ想いだったけど、やっぱり和田さん、あんたは男らしいわね。わたしもほっとしたわ」 借金の話など忘れてしまって、自分の話題をして笑っている二人を見て、胸が熱くなる茂樹だった。 |