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第四章 強い男性 一番の友人と言っても、男女の問題に第三者が介入することには限界がある。 美沙子は病院から、美奈子の家族に、本来なら連絡をしてやるべきだったが敢えてしなかった。 厄介なことに巻き込まれたくないという心理も働いたが、だらしない私生活を続ける美奈子に、これ以上つきあっていけない気持ちが、そうさせたのかも知れない。 『彼女とは、もう会わないようにしなければ』 病院から、家に帰る電車の中で考えていたら、三人連れの学生風の男たちが美沙子に話しかけてきた。 「こんなに遅くまで、何をしてたの?悲しそうな顔をしてさ。彼氏にでも抱かれた後に捨てられたんだろう。俺たちが慰めてやろうか」 酔っている雰囲気でもなかったが、いかにも悪さばかりしている連中に見えたので、一瞬周りを見渡し助けを求めようとした。 電車の中には、ほとんど人がいないことに気がついた美沙子は愕然とした表情をした。 「誰も助けには来てくれないぜ、観念しろよ」 不気味な笑いを浮かべて、リーダー格の男が言った。 美沙子は今までに、こういった経験が無かっただけに、どうすればいいのか全く解らなかった。 『こういう時に、美奈子が居てくれたらどれだけ気強いか』 一瞬、美沙子は病院での自分がした冷たい態度を後悔した。 美奈子は、確かにふしだらな生活を送って来たが、それだけに修羅場も踏んでいる。 『こんな事態になっても、彼女なら動揺しないで切り抜ける度胸があるのに・・・』 そう思ってもどうしようもないのに、短い時間の中で美沙子の心の中で想いが巡るのだった。 「おい、あんた。ぼっとしてんじゃねえよ!金を出しな」と言って、別の男が彼女のハンドバッグを無理やり取りあげようとした。 「いてえ!いてえ!何すんだよ!」 ハンドバッグを掴もうとした男が急に叫ぶ声で、美沙子はその男の後ろに立っている大きな男性に気がついた。 痛みで叫ぶ男の腕を捻あげて、怖い顔をしたその男性が初めて声を出した。 「お前たちチンピラは、弱い女性しか相手に出来ないのか!俺が相手になってやろうか?ええ、どうなんだ!」 低い声だが、迫力のある台詞に圧倒された三人は、一歩引いた。 しかし、リーダー格の男が、『ここで引き下がるわけにはいかない』と思ったのか、その男性の前に出て、「何だよう!やるならやってやろうじゃねえか!」と啖呵を切った。 「グシャ!」という音がして、そのリーダー格の男が電車のドアまでふっ飛んだ。 その男性は、もう一人の男の腕を捻上げていたままで、もう一方の左手でリーダー格の男の顎に一撃をくらわせたのだ。 ドアまで飛ばされ、完全に気を失って倒れている男を見た仲間の二人は呆然としていた。 「おい!お前たちには、目の不自由な人生を送らせてやろうか。この男は、もう一生口を利けないハンディーキャップを背負ったようだぜ」 「ピチャピチャ」と言う音がするのを聞いて、二人の男の足下が水浸しになっているのを見た美沙子は、思わず「おしっこをちびっているわ!」と発してしまった。 美沙子の不用意な言葉を聞いた、その救世主の男性は笑いながら、「女性も、不測の事態になると、結構言いますね」美沙子に向かって言った。 我に返った美沙子は急に顔を赤くして下を向いてしまった。 『世の中、捨てたものではない。こんなに頼り甲斐のある男性がいるんだわ』 それが、社会人になってから初めて恋心が芽生えた瞬間だった。 |