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第四十三章 怪物の本領 茂樹は途方に暮れて、耕一に電話をした。 「そうか、彼らは監禁リンチをするつもりだな。徳大寺辰子はいま、何処にいるんだろう、和田、知っているか?」 耕一は冷静に判断していた。 「監禁リンチ?それは何だ?」 茂樹は聞き慣れない、その言葉に不気味さを感じた。 「和田。もう引き上げて帰ってこいよ。そんな馬鹿女の為に、それ以上してやることはないよ。多分、連れ去られた二人は殺されるか、気が狂って戻ってくるか、どちらかしかない」 監禁リンチの説明を耕一から聞いた茂樹も、そう思ったが、茂樹は正義感が強く、不条理なことには人一倍怒りを感じる性格なのだ。 その性格は、高校生の時に父親が蒸発した事件で、余計強くなっていった。 「杉本。確かにお前の言う通りかもしれない。こんな無責任で、身勝手な女は今まで見たことがない。だが俺は、それよりもああいった連中がこの世の中でのさばっているのが許せないんだ。あのママは、お前のことを怖れている。俺が聞きだして見る。 携帯電話の番号を知っているから」 茂樹の話を黙って耕一は聞いていた。 「わかった。それじゃお前の好きなようにやったらいいだろう。だが今日、明日じゅうに、その二人を助けださないと、間違いなく気が狂ってしまうだろう。そのリンチは十日間ぐらいやるだろうから、命の方はその間大丈夫だと思う」 さすが、修羅場をくぐって来ただけに、何でも良く知っている。 耕一との電話を切った茂樹は、辰子の携帯に電話をした。 「もしもし。和田ですが」 茂樹が声を発するまで黙っていた辰子は、茂樹だとわかって安心したらしく、「和田さん。今どこにいるの?」 と聞いてきた。 「柴田勇作さんの家ですよ。ママのところの取りたて屋が、柴田夫婦を連れ去ったようです。杉本の話では監禁リンチをするためだろうと言ってましたが、居場所を教えてください。僕がそこに行きます」 「あの化け物は、どうしているの?」 余ほど、耕一のことを怖れているのだ。 「杉本は、会社にいます。手を出させませんから、早く教えてください」 しばらく黙っていた辰子は、「浅草の言問橋(ことといばし)の傍にある八代マンションの710号室。わたしも今そこにいるけど、もうわたしの手から離れてしまったから、どうしようもないの」 「わかりました。今からそちらに行きます」 メモをしてから、電話を切ろうとしたら、「和田さん、ここに来たら危険よ。十人以上の奴らがいるんだから」 そういって叫ぶ辰子の声を聞いていた茂樹だったが、黙って電話を切った。 待たせていたタクシーに乗って、「今度は、浅草の言問橋に行ってください」 老運転手は「あいよ」と言ってアクセルを踏んだ。 「あそこで立っている女性を放っておいていいの?」 その運転手が聞いてきたが、「いいんです。あんな女は」と吐き捨てるように茂樹は言った。 「言問橋の傍に八代マンションというのがあります。そこに行ってください」 「あいよ」 たった一日の付き合いだったが、いつしか二人の間に特別な感情が生まれていた。 一方、茂樹と辰子の電話を盗聴していた耕一が動き出した。 |