第五章  強し美奈子

神が子供を産む歓びと苦しみを女に与えたことは、大きな贈り物と捉えるべきだろう。
女というものは不思議な動物で、男には到底理解できない超能力を具えている。
複数の男性と、同時期に頻繁に肉体交渉を持ち、誰の子を孕んだのか解らないと言っていた美奈子だったが、直感と日々の体調の変化で、誰の子であるか見当はついていた。
美奈子は交渉を持った相手誰一人、愛情を感じた者はいなかったが、悪いことには、宿した子の父親が杉本であったのだ。
他の男性は、少ないなりに男性の責任感を持ち合わせていたが、杉本だけは、己の欲望だけを満たすだけで、美奈子のことを配慮するような了見を全く持っていなかった。
その上に、自分以外の男と関係を持っていたことを杉本に知られた今、彼に妊娠したことを告白しても、どのような反応を示すか解りきっていた。
返って、どんな難くせをつけられるか、その方が心配だった。
「先生、子供を堕す手術はここでして貰えるのでしょうか?」
美奈子は、担ぎ込まれた病院の医者に尋ねた。
「さあ、わたしは婦人科の医者ではないので、何とも申せません。ただ出血が激しかったのに流産していないのは、あなたはよほど丈夫な体なんでしょうね。今晩はここで泊まられた方がいいですよ」
その医者は、そう言って部屋を出て行った。
暫く考え込んでいた美奈子は、携帯電話を取りだして杉本の携帯電話にかけた。
「もしもし、美奈子ですが」
繋がっているのだが、杉本は黙っていた。
「わたし、さっき病院に担ぎこまれたんです」
さすがに、ワルの杉本も、美奈子の言葉で口を開いた。
「自殺未遂でも、しでかしたの?」
頭にきた美奈子は、杉本にすべてをぶちまけた。
「あなたの子供が出来たのよ。それで体調を崩して倒れたってわけ!」
吐き捨てるような台詞に、一瞬黙ってしまった杉本だったが、予想した通り、「俺以外の者とも寝ていたのに、何故俺の子なんだよう!」
怒鳴るように言い返してきた。
「それが解るのよ!あんただけしか有り得ないはっきりした理由があるのよ。思い当たるでしょう、ふん!それが仇になったってこと。罰が当ったのよ、いい気味だわ」
さすがに、杉本も黙ってしまった。
実は、それは嘘で他の男性との危険性もあったのだ。
「明日は、会社休ませてもらうわ。明後日、ゆっくり話し合いをしましょう」
美奈子の方から電話を切った。
「ふん!必ず見返してやるから」