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第二十二章 一難去って 赤木の裏切りによって、吉永の評判は、ミクアマ本社のトップにも伝わり、石原、茂樹の汚名は挽回された。 佐藤社長は、石原のみならず、茂樹にまで電話で、誤解の謝罪をした。 吉永の処分は、茂樹に一任されたが、茂樹は吉永に手をつけなかった。 しかし、吉永は自分の微妙な立場を察知して、茂樹に辞職の意向を伝えたが、茂樹は引き留めた。 一旦、辞意を撤回した吉永だったが、次の職探しの間の繋ぎであることを、茂樹は承知していた。 「大隈君。吉永はいずれ辞める。だから営業マンが要るんだが、当面は女性では荷が重いだろうけど、君にやってもらいたいんだ」 茂樹は、重子に頭を下げて頼んだ。 「嫌だ、和田さん。そんな頭を下げて、似合わないわ。いいですよ、わたしで出来ることなら、なんなりと」 あっけらかんと笑って、重子は茂樹の申し入れを受けた。 それから3ヶ月が過ぎた。 ミクアマ・リミテッドの営業実績は着実に伸びていたが、肝心のミクアマアンテナの経営が危ないという黒い噂が、東京でも流れ出した。 その直後、佐藤社長が急に入院して、No2の石原が実質上の経営の腕をふるうことになった。 佐藤社長は前立腺肥大の手術を受ける為に入院したというのだが、実は前立腺癌だという噂が茂樹のところにも流れてきた。 赤木が茂樹に言ったのだ。 「暫くは、佐藤社長の復帰は無理でっせ。石原さんが社長代行ということになりましたが、ああ、よかったと思ってるんですわ」 茂樹には、赤木が何を言っているのか理解できなかったが、後から石原に話を聞いて事情が呑み込めた。 「メインバンクのしあわせ銀行が、僕に個人保証をしてくれと言うんだ。実質の社長だから、当然だと主張しているが、君、どう思う?」 石原の不安そうな声が電話の向こうから伝わってくる。 「僕には、何とも言えないですね」 茂樹は正直に言った。 「そうだな。僕も正直言って判断に困っているんだが、銀行が飽くまで要求するなら仕方ないと腹を括っている」 茂樹は、ミクアマ・リミテッドの資金繰りも、しあわせ銀行だから、不安になって、石原に訊ねてみた。 「うちの方の資金繰りや、LC開設の業務もしあわせ銀行がやっていますが、どうなるんでしょうか?」 「それは、心配しなくていいよ。親会社が債務保証をしているんだから、僕が個人保証すれば、それ以上銀行は何も言わないよ」 茂樹は、内心ほっとした。 『一難去ってまた一難だなあ!』 茂樹は、吉永の件が片付いてほっとしていた処だったので、思わず溜息を洩らした。 |