第十三章  夢と現実の狭間

「日本(ヤマト)!日本(ヤマト)!」
美沙子は、うなされている息子の日本(ヤマト)に叫んだ。
目をつぶったまま、日本(ヤマト)は、ぶつぶつ言っている。
「トトが・・・。トトが・・・・」
仙台の実家に帰っている茂樹に何かあったのではと、思った美沙子だったが、先ず日本(ヤマト)のことが気がかりで、うなされている様子を静かに見守ることにした。
「トトが裸のおねえさんを抱いている・・・」
少し落ち着いた日本(ヤマト)は、今度は微笑すら浮かべて、意味深長なことを呟いているのだ。
美沙子は日本(ヤマト)が口走っている、「おねえさん」が誰のことでなのかすぐに判った。
『まさか!』
咄嗟に携帯電話のダイアルを押していた美沙子だった。
「プウ、プウ、プウ・・」
電話中だ。
もう一度ダイアルを押してみた。
「お掛けになった電話は電波の届かないところにおられるか、電源を切っておられます・・・」
美沙子の額から汗が滲んでいた。
さっきまで、日本(ヤマト)のことばかり気になっていた美沙子だったが、今は茂樹のことで頭がいっぱいになっていた。
今度は、美奈子のところに電話をしてみた。
「ただいま留守にしています・・・」
美沙子は壁に掛かっている時計を見た。
『午前6時だ!美奈子はまだ寝ているのかな・・・』
人間という生き物はどこまでも、自分の都合のよい方に考える一方で、最悪の事態も考える。
もう一度、ダイアルを押してみた。
「ただいま留守にしています・・・ピイッと鳴りましたら、お名前とご用件をお話ください・・・ピイッ・・・」
「もしもし、わたし美沙子です。電話をください・・・」
美沙子は、携帯電話と1時間以上睨めっこをしたが、電話は掛かってこなかった。
「カカ、何しているの?」
日本(ヤマト)が目を醒ましたのだ。
美沙子の頭は、茂樹と美奈子のことでいっぱいだった。
「美奈子おねえさんから電話を待っているのよ」
冷静な口調で喋る美沙子だったが、胸は熱く燃えていた。
「おねえさんだったら、トトと一緒にいるよ」
唐突に言う日本(ヤマト)に、美沙子は腹立ちさえ覚えた。
「何を言ってるの!夢を観ていただけでしょう・・・」
強い口調で言う美沙子に、日本(ヤマト)は静かに言った。
「ううん!ヤマトはトトと裸のおねえさんが抱き合っているのを見たんだもん・・・」
「喋るのおやめなさい!」
美沙子は、はじめて日本(ヤマト)に手をかけた。
しかし、日本(ヤマト)は泣かなかった。
「カカ!ごめんなさい」
我に帰った美沙子は、自分の行為を恥じた。
『もういいわ!』
携帯電話を放り投げて、日本(ヤマト)を抱きあげた美沙子が日本(ヤマト)に言った。
「わたしには日本(ヤマト)とアキ子がいるわね・・・」
そこへ携帯電話が鳴った。
手を震わせながら、美沙子は携帯電話を拾いあげた。